杉家の女たち

杉家の女たち page 16/18

電子ブックを開く

このページは 杉家の女たち の電子ブックに掲載されている16ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
敏三郎に代わって玄瑞が答えた。「久坂さん、あなたが付いていながら、困るじゃないですか。敏三郎は普通の子とは違うんですよ」文は珍しく気色ばんで玄瑞を非難した。「誠に申し訳ない。でも、あま....

敏三郎に代わって玄瑞が答えた。「久坂さん、あなたが付いていながら、困るじゃないですか。敏三郎は普通の子とは違うんですよ」文は珍しく気色ばんで玄瑞を非難した。「誠に申し訳ない。でも、あまり敏さんを特別扱いしないほうが、いいんじゃないですか」「あなたに何が分かるんですか。耳も聞こえず話もできない敏三郎は、人様に迷惑をかけないようにして、ひっそりと暮らしていくしかないんですよ」「それは、どうかな。あなたがそう思い込んでいるだけじゃないですか」「何ですって」「世の中には、体が不自由でも立派に社会の役に立っている人はいくらでもいます。高取藩の谷た に三さん山ざんは、9歳で目と耳を患い、弱視の聾者になったが、独学で儒学を修めて、興譲館という私塾を開いているし、芸州の宇都宮黙も く霖りんは、21歳の時大病で聾唖者になったあと、本願寺の僧籍を得て諸国を巡り、勤王の志士に大きな影響を与えています。だから、今から敏さんの可能性を摘んでしまうのはもったいない話ですよ。あなたも敏さんが利発なことは、私なんかよりずっとよくご存じでしょう」112