杉家の女たち

杉家の女たち page 15/18

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寅次郎はきっぱりと言った。文は、そうかぁと思った。想定内の答えだった。「久坂は年は若いが、その才能は防長年少超一流と評価できる。久坂はこの話をすでに承知してくれた。もちろん、お前も異存なか....

寅次郎はきっぱりと言った。文は、そうかぁと思った。想定内の答えだった。「久坂は年は若いが、その才能は防長年少超一流と評価できる。久坂はこの話をすでに承知してくれた。もちろん、お前も異存なかろうな」寅次郎にこう念を押されて、断る勇気は文にはなかった。「分かりました」と答えるほか道はなかったのである。それからしばらく、文は悶々とした日を送った。今で言うマリッジブルーであったかもしれない。そんなある日のこと、夕方になっても敏三郎が家に帰らなかった。文は心配になって辺りを探し回った。事故に遭ったとしても、敏三郎は助けを求めることができないのだ。周囲は暗くなりはじめ、いよいよ焦りを感じ始めた時、ふと聞き覚えのある詩吟の唸りが聞こえてきた。と、暗闇の向こうから2つの人影が近づいてくる。玄瑞と敏三郎であった。文は急いで2人に駆け寄ると、敏三郎の肩を両手でゆすって言った。「いったい、何処へ行ってたの。心配するじゃないの」「これは文さん。敏さんと団子岩の上まで登ってたら、余りに星空がきれいなもんだから、つい2人とも見とれてしまって……」松下村塾111