杉家の女たち

杉家の女たち page 11/18

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ていた。「私が想像するに、高杉晋作か久坂玄瑞のどっちかだと思うのよ。そりゃ、塾を主宰する大兄が選ぶんだもの。まずは思想的、能力的に優れた者を候補にするはずよ。塾生の中で2人の実力は頭一つ出ているか....

ていた。「私が想像するに、高杉晋作か久坂玄瑞のどっちかだと思うのよ。そりゃ、塾を主宰する大兄が選ぶんだもの。まずは思想的、能力的に優れた者を候補にするはずよ。塾生の中で2人の実力は頭一つ出ているからね。入江杉蔵(九一)、吉田栄太郎(稔麿)あたりも可能性としてはあるけど、やはりあの2人とは差があるわ。まあ、大兄の場合ほかに価値基準がなさそうだし」「ほかの価値基準って?」「異性としての魅力とかよ。でも大兄にそんなこと期待しても無駄でしょう。ま、獄中で高須久子と付き合ってからは、少しはましになったかもしれないけど」「寿姉さん、悪いこと言うのね」そう言いながら、文は高杉晋作と久坂玄瑞の顔を思い浮かべていた。高杉は、豪傑を絵に描いたような男で、時々塾で文と顔を合わすと、「どう文ちゃん、今度江向に芝居でも観に行かないか」と不良のように誘いをかけたりする。冗談とは分かっていても、文は顔を赤らめ黙って逃げ出すのが常であった。すると、高杉はそれを面白がって、ますます態度をエスカレートさせるのだった。純情で世間知らずの自分に高杉のような男の妻がとても務まるとは思えなかった。松下村塾107