杉家の女たち

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松下村塾には、飯田俊徳や、国司仙吉、妻木寿之進、正木退蔵など、敏三郎と同じ11、2歳の塾生もいた。皆将来に夢を抱いて、一生懸命勉学に励む少年たちであった。もし、敏三郎が五体満足に生まれ....

松下村塾には、飯田俊徳や、国司仙吉、妻木寿之進、正木退蔵など、敏三郎と同じ11、2歳の塾生もいた。皆将来に夢を抱いて、一生懸命勉学に励む少年たちであった。もし、敏三郎が五体満足に生まれてきていたなら、彼らと同じように将来に夢を描けたのに、と文は弟を不憫に感じるのだった。◇ ● □そんなある日、寿が突然こんなことを文に聞いてきた。「ねえ文、塾生さんの中で、お気に入りの男子はいないの?」「えーっ、そんなこと考えたこともないですよ」「ほんとに? でも文、大兄(松陰)はあなたのお婿さんを塾生の中から選ぼうとしているみたいよ」文はぎょっとした。もう15歳になったのだから、千代や寿の嫁いだ年齢を考えると、ぼちぼち縁談があってもまったく不思議ではなかった。しかし、具体的に相手は塾生の中からと聞くと、急に生々しい感じがして、文は顔が火ほ照てってくるのを感じた。もっとも以前、文の知らないところで、桂小五郎との婚約話が持ち上がったことがあったようだが、それはまだ文が子供だった時分のことで、その後、この話は立ち消えになっ106