真田幸村時代のおもしろばなし百話

真田幸村時代のおもしろばなし百話 page 22/26

電子ブックを開く

このページは 真田幸村時代のおもしろばなし百話 の電子ブックに掲載されている22ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
22落するだろう。」戦争をやったことのない勝資が云った。「ばかな。高遠城の仁に科しな盛もり信のぶは城を枕に死ぬ気で戦うつもりでいる。盛信が支えている間こそ勝頼様を逃がすべきです。それが武田を滅ぼさない唯....

22落するだろう。」戦争をやったことのない勝資が云った。「ばかな。高遠城の仁に科しな盛もり信のぶは城を枕に死ぬ気で戦うつもりでいる。盛信が支えている間こそ勝頼様を逃がすべきです。それが武田を滅ぼさない唯一の道である。」昌幸はそう云いたかったが云えなかった。この位の理屈は分かるだろうと思っていたのに今だに自分の発言に権威を持たせようとしたり、武田家の統領を云うん々ぬんして虚勢を張ったりする家老たちに昌幸は怒りさえ覚えたのである。「今は作戦の全てが手詰まりでござるぞ。御親類衆の筆頭・穴山殿が背そむかれた以上、甲斐の国が最もお館様には危険であることがお分かりにならないのですか。」昌幸はかなり激した口調で云った。「真田殿はもともと信濃の人であるから甲斐のことは分からぬ。われら甲斐生まれの重臣として、この際他国へお館様を移し申し上げることは出来ぬのだ。」と長坂長閑斎が云った。御親類衆は放心したような顔をして一言も発しなかった。穴山梅雪の裏切りを聞いただけでキモをつぶし、いったいこの身をどう処置したらいいかという事ばかり考えていて、作戦を立てられる状態ではなかった。この時点で武田家の首脳は殆んど腰を抜かしたのである。「お館様、ご決意を。」昌幸が迫ると「家臣一同断じて他国移転は反対申し上げます。」と長坂と跡部が勝頼の前にニジリ寄るようにして云った。勝頼は昌幸の言げんに従いたかった。しかし長坂・跡部の両家老の意見を退けるわけにもいかなかった。「しからば大おお炊いの助すけ、上杉殿には如何なる返事を書くべきか。」勝頼が下げ問もんした。「上杉殿の好意に対し、