恋する幸村

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何となく察しがついた。しかし、武田信玄という名は今まで聞いたことがなかった。将軍・足あし利かが義よし輝てる以外でさくらが名を知る武将と言えば、ここ数年京都を賑わせてきた阿あ波わ国(徳島県)の三み好よし....

何となく察しがついた。しかし、武田信玄という名は今まで聞いたことがなかった。将軍・足あし利かが義よし輝てる以外でさくらが名を知る武将と言えば、ここ数年京都を賑わせてきた阿あ波わ国(徳島県)の三み好よし長なが慶よし、大や ま和と国(奈良県)の松ま つ永なが久ひさ秀ひでぐらいのものであった。「お相手というのは、兄・信玄に仕える武将・真さ な田だ幸ゆき隆たかの三男で昌ま さ幸ゆきという18歳の若武者です」夫人の言葉にさくらは二度びっくりした。なんで、自分のような卑ひ賤せんな身分の者が、そんな名のある武家の嫁の候補に挙がったのか、全くもって理解できなかった。「ほほほ、そなたが信じられないのももっともなことです」さくらの様子を見て、夫人は微ほ ほ笑えみながら説明しはじめた。「実は、兄・信玄は京の三条家から妻を娶め とっております。地方の武家にとって、公家との縁組は何といっても、御家の格上げになりますから。で、7歳の時から小こ姓しょうとして自分に仕え、その才能を見込んでいる昌幸殿にも、自分と同じように公家の嫁をあてがってやろうと考えたのでしょう。ところが残念なことに、今当家にはどうにも年齢的に適当な女子がおりませぬ」「だからといって、私なんぞが」さくらは大きく首を横に振った。夫人は、構わず話を続ける。8