恋する幸村

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京の公く家げ、菊き く亭てい家の下女・さくらが、当主晴は る季すえの夫人に呼び出されたのは、永え い禄ろく7年(1564)の秋もだいぶ深まった頃のこと....

京の公く家げ、菊き く亭てい家の下女・さくらが、当主晴は る季すえの夫人に呼び出されたのは、永え い禄ろく7年(1564)の秋もだいぶ深まった頃のことであった。さくらは緊張した面落ちで、白や薄うす紅べに色の菊の花が咲き乱れる中庭を通って、晴季夫人の居室へ向かった。「何か御用でございましょうか」部屋に通されたさくらは、両手を付き額ひたいを畳に押し付けたまま、かしこまって尋ねた。部屋の中まで、仄ほ のかに甘い菊の香が漂ってくる。さくらが晴季夫人から直接声を掛けられたのは、当家へ奉公に来て以来3年目にして初めてのことであった。「折り入って、そなたに頼み事があります」「奥方様が、私などにいったいどのような」さくらには、どう考えても夫人から何かを頼まれるような能力や資格が自分にあろうと母の素性生母・山之手殿は公家の出身?16