恋する幸村

恋する幸村 page 18/24

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いた彼の夫人と思しき女性がさくらに声をかけてきた。「私は、京の三条家から嫁いだ信玄の室です。皆は三条夫人と呼んでおりますが。そなたのことは、菊亭晴季殿の御ご令れい室しつから聞いています。まあ、いろいろ....

いた彼の夫人と思しき女性がさくらに声をかけてきた。「私は、京の三条家から嫁いだ信玄の室です。皆は三条夫人と呼んでおりますが。そなたのことは、菊亭晴季殿の御ご令れい室しつから聞いています。まあ、いろいろ面め ん食くらうことも多いでしょうが、無理をせず何か悩み事があれば、何なりと私に相談しなさい」どうやら、この信玄の室は、すでにさくらの素す性じょうを知っているようである。さくらは敵陣に1人味方を見つけたような気がして、少し心が和らいだ。それから2日後、真田家の屋敷で婚礼の儀は行われた。新婦であるさくらは、新郎・昌ま さ幸ゆきと並んで座敷の上座に座らされた。初めて見る昌幸は、自分より2歳年上と聞いていたが、意外にもまだ少年と言っていいような風ふ う貌ぼうであった。東国の武士すなわち武ぶ骨こつな大男というさくらの思い込みは、見事に裏切られた(いい裏切られ方であったが)。信玄はこの時もまた、媒酌人としての挨拶をしたあと、すぐに席を立っていった。儀式が済むと祝宴が開かれた。初めに昌幸の父・真田幸ゆ き隆たかが自己紹介し、幸隆から昌幸の長兄・信のぶ綱つな、次兄・昌ま さ輝てる、弟・信の ぶ尹ただ、それから、さくらにとっては姑しゅうとめに当たる幸隆の正室( 河か原わら隆たか正まさの妹)らが紹介された。真田幸隆は、信濃の名族・海う ん野の氏の流れを汲くむ豪族であったが、信玄の父・武田信虎らによって信濃国の真さ な田だ郷ごう(長野県上田市)を追われ、一度は上こ う野ずけ国(群馬県)に亡ぼう命めいした。18