恋する幸村

恋する幸村 page 17/24

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敷地内には多くの建物と庭園があり、さくらは一番大きな建物に通された。長い廊下を進み、奥の方の座敷に入ると、そこには禿はげ頭の恰か っ幅ぷくのいい武人が胡あ ぐ坐らをかいて座っていた。その武人は、さくらが....

敷地内には多くの建物と庭園があり、さくらは一番大きな建物に通された。長い廊下を進み、奥の方の座敷に入ると、そこには禿はげ頭の恰か っ幅ぷくのいい武人が胡あ ぐ坐らをかいて座っていた。その武人は、さくらが着席するのを待って、おもむろにこう言った。「わしは武田家の当主で信玄と申す。京からの長旅、御苦労であったな」「いえ」史上最強と言われる武田軍の総そ う帥すいを前にして、さくらは震える声で言った。これが音に聞こえた信玄かぁと思った。想像にたがわず、近づきがたい威い厳げんを備えている。京を出発するまでに、さくらは晴季夫人から、武田家当主・信玄の「偉大さ」について詳しく聞かされていた。本国甲斐に加え今や隣国信し な濃のをほぼ平定した彼は、さらに駿す る河がや遠とおと江うみにも領土を広げようとしていると。「お主はこたび、この信玄の媒ば い酌しゃくで真田幸隆の三男・昌幸と夫婦になる」「はあ」さくらの声はやはり震えていた。「幸隆は、武田家の家臣の中でも一、二を争う強つ わ者ものじゃ。昌幸はその血を引く男子ゆえ、ゆくゆくは武田の有力武将となろう。そなたは果か報ほう者ものじゃ」それだけ言うと、忙しそうにそそくさと部屋を出ていった。すると、信玄の隣に座って母の素性17