恋する幸村

恋する幸村 page 14/24

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いて、智丸に相談した。当然反対してくれると思いきや、期待に反して彼ははっきり行くなとは言ってくれなかった。行くなと言ってくれたところで、事態が変わろうとは思えなかったが、さくらはそうした言葉が聞きたか....

いて、智丸に相談した。当然反対してくれると思いきや、期待に反して彼ははっきり行くなとは言ってくれなかった。行くなと言ってくれたところで、事態が変わろうとは思えなかったが、さくらはそうした言葉が聞きたかったのだ。さくらがしくしく泣き出すと、「実は、親方に頼んで来月から近江の国友に鉄砲製造の修業に行かせてもらえることになった。その間は給金もほとんど出ないし、お前を養っていけない。向こうで技術を学んだら、京都に帰って岩い わ倉くら辺りに鉄砲の一大製造所をつくろうと思っている。そうしたら、お前とも結婚できる。あと10年あればなぁ……」智丸はそうに言って、申し訳なさそうにさくらを見み遣やった。さくらは、教育らしい教育は受けていなかったが、合理的にものを考えることのできる少女だった。智丸は、自分よりも将来の夢を優先させようとしているのだ。彼女は、選ぶ道は一つしかないとすぐに悟る。ひとしきり泣いたあと、さくらは顔を上げこうつぶやいた。「わたし、お嫁に行くね。そして、男の子を産んで、智丸様の作った鉄砲で天下を取るような武将に育ててみせる、絶対」結局さくらは、甲か斐い行きを決心する。身代わりの速さは、彼女の身し ん上じょうでもあった。14